高度肥満治療の最前線「『肥満』の怖さは、糖尿病などの合併症を引き起こすことです」笠間和典先生

「どうしても痩せられない…」そんな人に残された最後の希望が減量手術です

肥満から起こる負の連鎖を断つ!

私が腹腔鏡下減量手術を始めたのは、2002年のことです。その前の年に「腹腔鏡下での減量手術を受けたい」というブラジル人の患者さんが私を訪ねてこられたんです。
話を聞いてみると、私のところに来るまでいくつもの日本の病院で断られてきたと。肥満や糖尿病の治療は内科の領域だとばかり思っていましたが、世界では外科治療が行なわれているのかと衝撃を受けました。そこでブラジルへ渡り、トレーニングを積み重ね日本での腹腔鏡下減量手術を始めるまでになりました。

斎木先生

重症肥満症になると靴下をはいたり、靴ひもを結んだりといった日常的な動作すら思うようにできません。それが減量手術によってできるようになる。まさに生活、人生そのものが変わるわけです。そして何より糖尿病など合併症の恐怖からも解放される。医師としてこれほどやりがいのある治療はないと思いました。
著名な元サッカー選手などが手術を受けたことが話題になり、日本でも少しずつ認知され始めていますが、世界と比べるとまだまだ立ち後れている状況です。
内科的治療ではどうにもならないという肥満や糖尿病の患者さんには、ぜひもっとよく知ってもらいたいと思いますね。

手術は受けずに済むのが一番。そうなる前にまずは対策を講じましょう

遺伝的にみて私たちは「肥満」に弱いんです

斎木先生

先にも少し触れましたが、肥満の怖さは太っていること自体ではなく、肥満が引き金となって、さまざまな病気が引き起こされるところにあります。欧米人と比べて筋肉量が少なく、内臓脂肪の割合が高い日本人、つまりアジア人は、圧倒的に低い肥満度で糖尿病などほかの病気を発症しやすくなることが分かっています。
さらに糖尿病に関していえば、日本人はインスリンの分泌量が低く、肥満によってインスリン抵抗性の高い状態が続くと、膵臓に負担がかかり、糖尿病の進行は早まってしまいます。そしてまた次の合併症リスクに備え、新しい薬を飲み続けることになるのです。
薬の力で糖尿病とうまく付き合っていこうというのが従来の内科治療とすれば、糖尿病との鎖を物理的に断ち切るのが減量手術といえます。

最高のチームで日本から肥満・糖尿病をなくしたい

とはいえ、減量手術をしても毎日ダラダラと食べ続けるような生活をしていると、せっかく落ちた体重が戻る可能性もゼロではありません。そこで私たちが重視しているのが、外科医だけでなく内科医や薬剤師、管理栄養士、看護師、トレーナー、ソーシャルワーカーと連携しながら治療にあたる、チーム医療です。
このチームで術前から術後最低5年間はフォローアップにあたります。5年間のフォローアップ率は75%以上。これは世界的にみても高い数字で、スタッフ一人一人の努力の賜物だと自負しています。
術後の心理面のケアには、定期的なサポートグループが開かれ、食生活に問題を抱えている患者さんには、管理栄養士からフォーミュラ食の利用を提案することもあります。
それぞれの職種のプロがそれぞれの視点から意見を交わすことで、本当に患者さんに寄り添ったケアができる。そう考えています。
世界に誇る最高のチームで、肥満や糖尿病で苦しむ人を一人でも多く救いたい。日本の肥満治療はまだまだこれからだと思いますね。

術前の減量にフォーミュラ食は欠かすことができません

減量・糖尿病外科治療専属の管理栄養士として、手術を受ける患者さん一人一人に合わせた栄養指導を行っています。当院での減量外科治療が始まって以来ですから、はや10年近く。担当させていただいた患者さんは全国700名以上にのぼります。
当院では、術前の減量と術後の栄養管理にフォーミュラ食を取り入れていますが、特に重要なのが術後の回復にもかかわる術前減量です。術前1ヵ月間、患者さんには基本として夕食1食をフォーミュラ食に置き替えてもらい、手術に向けた体調・体重コントロールを行います。
カロリーは低く抑えながら、タンパク質やビタミン・ミネラルなど栄養素がバランスよく補えるフォーミュラ食は非常に有効な減量手段で、内臓脂肪を効率よく落とすことで、手術でのリスク減にもつながっています。

おいしさや味のバリエーションも患者さんにとっては大きな支えに

当院にいらっしゃるのは、これまでありとあらゆるダイエットに挑戦されてきた方がほとんど。
もちろんフォーミュラ食をご存じの方もたくさんいらっしゃいます。最初は昔の味を思い出して躊躇されながら、実際に飲むと「昔よりおいしくなってる!」と驚かれる方も多いですね。
栄養指導を行う立場としては、目標体重に少しでも確実に、安全に近づいてもらいたい。
高度肥満を抱える患者さんにとっては、1ヵ月夕食を置き替えるだけでも大変なことですから、おいしさや味のバリエーションといった続けやすい要素も、フォーミュラ食の大きな魅力だと思います。

吉川先生

エビデンス(科学的根拠)があること、これが最も重要なポイントです

一般的なダイエット食品などもありますが、医療機関としては確実に結果が出せるエビデンス(科学的根拠)がしっかりしたものでなければ、患者さんに提供することはできません。当院で採用しているフォーミュラ食も、もちろん信頼できるエビデンスが出されているものです。フォーミュラ食の使用と同時に食生活の見直しが非常に重要ですが、自宅で安全に減量をめざすには手軽で頼もしいツールだと思います。